「うええ!達綺ぃ……!」


入学式を終えて家に帰った後、私はダイニングテーブルに伏せて、盛大に後悔しております。

涙なんて出ないけど、悔しいから泣くフリ。


「まだ言ってんの姉ちゃん。大丈夫だって」

「だって顔を知られちゃったんだよ!?
明日が私の命日かもしれない!」

「は?殺人鬼じゃないんだから。
それに、顔は知ってても名前は知らないんだろ?」

「達綺!族の情報収集能力舐めてんでしょ!?
ありとあらゆる所から根掘り葉掘り聞き出して……ああー!」

「……姉ちゃんだって詳しくは知らないだろ。
しかもそいつらが、ホントに人殺すような奴らとは限らねえじゃん。
ただの暴走族だろ?」


ただの、ってオイ。

旗とか鉄パイプ振り回して、夜中にブオンブオン暴れる奴らがマトモなわけないじゃん。


「もう終わった……」

「ハイハイ、そんな心配してるんだったらお守り持ってけば?」

「お守りー?」





「母さんのギター」