───キイ

灯台の入口、海風に侵食された古い木製の扉を開くと、一筋の光が私達を誘う。


「うわぁ、変わってない」


薄暗い灯台の中に入って上を見上げる。

灯台の内側には、壁を這うように螺旋階段が続いてる。

上を仰げば、頂上辺りからは光が漏れていてとても神秘的。


「……中はこうなってんのか、凄いな」


睦斗も感嘆して扉の中へ。

ってあれ?睦斗はここに来たことなかったの?

じゃあどうして、私を連れて来たんだろう。


「ねえ、睦斗」


気になったので階段を昇りながら声をかけた。


「ん?」

「どうしてここに連れて来てくれたの?」

「……お前の両親が、一番好きな場所だって聞いたから」

「え……?」

「夢が言ってた。この海は特別な場所だって。
だから優凛もここなら気晴らしになるかと思って」


私のためにここまで連れて来てくれたの?

私は睦斗に何もしてないのに。

もらったたくさんの喜び、睦斗に返せていないのに。


「ほら、着いたぞ」


考えている内に、茜色がすぐそばに迫っていた。

頂上にある扉から、ガラス越しに光が優しく包む。