「……着いたぞ」


辺り一体が夕日に染まる頃、睦斗のバイクに揺られて目的地にたどり着いた。

視界の隅から隅までが全て夕日色に染まっている。


「綺麗……」


そこは地平線の彼方まで続く海だった。

空も浜辺も、海さえオレンジ色に染まった世界。

……ここ、よく知ってる。

家族みんなで毎年来ていた海岸だから。

お母さんが亡くなるまでは、この海岸でひと夏の思い出を作るのが恒例だった。

懐かしい感覚を胸に睦斗の後を追って、砂浜へと足を沈めた。


「懐かしい…」


砂浜の感触に、楽しかった夏の日を思い出す。

お母さんとお父さんと達綺。

昼は思いっきりはしゃぎまくって、帰る前に灯台に登って夕日を眺めるのがいつもの流れだった。

あ、そうだ。


「ねえ、睦斗知ってる?」

「ん?」

「ほらあそこ、灯台があるでしょ?あれね、誰でも登れるようになってるの」


勢いよく指す、数十メートル先。

そこに夕焼け色に染まった灯台があった。


「……行くか」

「うん!」


それから2人並んで歩いて、夕日色の灯台の前へたどり着いた。