驚いて振り返ったら龍生が笑って首を振った。


「……龍生?」


苦しいのを隠してる笑顔だった。


「何も言わんでええ……」


龍生はまた、嘘をついていた。

私にしか聞こえない声。

私にしか見えない表情。

それなのに、龍生は嘘をついている。


「……分かった」


言葉に詰まって困惑していると、背後から睦斗の気配がした。


「お前ら……先にアジトに戻ってろ。こいつらを連れてな」


目で、流威と龍生を交互に見た睦斗。

視線を合図に、周りの人も従う素振りを見せる。

待って、龍生はどうなるの?

アジトに連れていって、どうするの?


「……大丈夫。こいつらに暴力は振るわねえよ。心配すんな」


不安に押し潰されそうになっていたけど、私の様子を察してくれた陸斗の言葉を受けて落ち着いた。


「……優凛」


ふと顔を上げれば、かなり近い場所に彼はいた。

見つめていると睦斗の手が私の手を取る。


「……ついて来い」

「どこに?」

「今じゃなきゃダメだ。……お前を連れて行きたい場所がある」



私を連れていきたい場所?

分からないまま手を引かれ、ついにほこりっぽい灰色の空間から抜け出した。