彼の足は次第に歩く幅を広げ、ついに駆けだした。

目がけるはもうもうと立ち込める砂煙の先にいる私。

距離が縮まると、その温かい手が私をたぐり寄せ、不意に抱きしめられた。


「優凛……」


睦斗の胸の中で聞こえる、少しこもった声が気持ちいい。

肌を通して感じる温かさが嬉しい。

抱きしめられているのに、驚いたとか恥ずかしいとかそんな感情一切無くて。

ああ、これを求めてたんだって感じた。


「よかった……無事でよかった」


そっか……私、この人を心のどこかで待ってたんだ。


「……うぐっ!」


しかしロマンティックな感情に浸ってる場合じゃない。


「睦斗……くるっ、し……!」


隙間なく包み込まれてる感覚。

恥ずかしいとか言ってる前に、死ぬ!

男の腕力で精一杯抱きつかれて絞め殺されるところだった!


「悪ぃ……」


必死の訴えが伝わったのか、ゆっくりと解放してくれる睦斗。

ふぅ、三途の川に足つっこむとこだったよ。

そんな冗談はさておき、状況を把握せねば。

そう思い私は辺りを見回した。