「くっ、何言うとるんや……!」


強がってる龍生も、2対1だとバツが悪いようだ。

……助太刀いたす。

心の中で唱え、行動に移した。

狙いを定めるは手前のピアスをした男。

一歩二歩と助走をつければ、ふわりと浮かぶ体。


「優凛!?」

「なっ!あれは……!てめえら避けろ!」


流威の脳裏に私の恐怖の足技が蘇ったのか、焦りが聞いて取れるように叫んだ。


───ドカッ!


当然、相手が気付くはずもなく、背中にヒット。

見事な飛び蹴りが決まった瞬間だった。


「ぐえっ……!?」


鳥のような声を上げ、崩れ落ちる男。

それっきり動くことはなかった。

大丈夫、峰打ちだ。


「お、おい……!」

「クソッ!やられた!!」

「う、嘘やろ優凛!なんて華麗な飛び蹴り!!」



周りが驚くのも仕方ない。

相手の意識がぶっ飛ぶくらいの蹴りを食らわせてやったんだからね。

体重をかけて一番重いヤツを。


「ふふふ……」


さて、反撃の始まりだ。不敵な笑みを浮かべると、肩を震わせ動きが固まる敵。

有無を言わせず近寄れば、顔をゆがめて焦りと恐怖の表情を浮かべる。


「くっ、来るな!」


それは龍生と取っ組み合いしていたはずの金髪。

相方のピアスが目の前でやられた焦燥からだろうか。

分け目も振らず逃げ出そうとする。


「こっちに来るな……うわッ!?」


しかしその瞬間、龍生は金髪の襟首あたりを掴み、片足を引っ掛け、見事に投げ技を決めて見せた。


「う゛っ…!」

「アホかお前…目の前の敵忘れんなや」


投げが速すぎて受け身が取れなかった相手は、一言唸り床に伏せた。


「ナイス龍生!」

「ハハッ、こんな奴ら朝飯前や!
なんたって俺は空手2段やからな!」

「えぇっ!2段ってまだ16歳で!?道理の強さだ!」

「ああ、せやから嘘やないで。自身持って優凛を守れる。
まあ、俺のことなんかより……」


龍生が首を傾ける方向には、この空間に独りとなった流威が呆然と立ち尽くしていた。

私たちが視線を向けていることに気がつくと、ビクリと肩を震わせる。