「うらあぁっ!!」


そうこう言ってるうちに敵は懐へ。


「……おっと!」


殴りかかってきた拳を、いとも簡単に受け止める龍生。

戦いに集中しながら私に声をかける。


「外に出て、まっすぐ進めば大通りがある!」


必死に逃げ道を教えてくれる最中にも、今度はもうひとりの男が拳を振りかざしていた。


「調子ぶっこいてんじゃねえよ裏切り者があ!」


それすらもう片方の手で受け止めてしまう龍生。

どんな反射神経してんだこの人。


「……逃げるんや!」


今生の別れ!とでも言うように声を張り上げる龍生。

しかし、逃げる?逃げるだって?

そんなことしちゃあ、安西の名が廃る。

私の家系は人事を尽くして人のために全うする一族なんだよ!


「ヤダ……」

「ハア!?」


逃げるのは嫌なんだ。

私、自分自身と向き合うって決めたんだから!