「ちょっと待って睦──」

「ん、終わった」


呼び止めるも、時すでに遅し。


「なぬ!?」


変な反応しながら返してもらったスマホの画面を確認。

確かに見慣れない番号が追加されている。

ふむふむ、これが睦斗の番号───ってそうじゃない!

なんかもう、あんまりの衝撃に頭痛とかどうでもよくなってきた。

精神的なものだったのかな。ストレスもあったし大嫌いな雨の日だし。


「とりあえずそれに連絡してくれ。じゃあまた後で」


颯爽と去って行った睦斗が手に持ってたパン、あれはたぶん昼食だったよね。

食べそびれたのに申し訳ない。

チラ、と見た自分のスマホ画面には結城睦斗、とご丁寧にフルネームで登録された連絡先が。


「どうしよう……」


関東トップクラスの不良の連絡先をゲットしてしまった。

どうする、今なら消してしまえることも可能だけど、そんなことできるはずがない。

私の歌を聴いて、守りたいって言ってくれたあの人のものだから。


「守りたい……か」


生憎私は姫なんて柄じゃないし、守られるつもりもない。

でも嬉しいことに変わりはない。

自然とにやけてしまう頬を押さえて職員室に向かって早退の許可をもらった。

そうして睦斗に連れられ家路につく──





はずだった。