「いいの、行ってきます」

「分かった、早く戻ってこい。家まで送ってやるから」

「え、いいよ。1人で帰れるって」

「1人で帰らせるかよ。顔色悪ぃし」


確かに一刻も早くおうちに帰りたいし、もう甘えてしまおう。


「では、よろしくお願いします……」

「俺今からバイク持ってくるから、連絡したらこっち来い」

「お手数おかけいたします」

「あー、でも連絡先知らねえな」


すると睦斗は「ん……」と言って手を差し出してきた。

なんだいその手は?握手でも求めているのかな?

ちょいっと彼の手のひらに、「お手」のような感じで自分の手を置いてみる。


「あ?……フフッ、何してんだ優凛」

「えっ……?」

「いや、俺が何も言わなかったの悪いけど……連絡先教えるからスマホ借してくれって意味で手出したのに」

「あっ、なるほど!」


やだ、恥ずかしい勘違いしちゃった!

連絡先教えるから携帯出せって手だったのか。

このタイミングで握手求めるバカがどこにいんのよ!


「ハイただいま!」


恥ずかしさのあまり何にも考えずバックからスマホを取り出し、スマホのロックを解除して渡す。

ってちょっと待て、相手は暴走族のトップだよ?

気軽に連絡先なんて教えちゃダメじゃん。