リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

「睦斗?」


話しかけてみたものの、返事は返ってこない。

その瞳は龍生の背中を追っていた。


「もしもーし、睦斗?」

「……なんだ?」


もう一度名を呼ぶと、ゆっくり振り返る。


「あの、来てくれてありがとう」


タイミングおかしいかなと思ったけど言える時に言わないと。

あんな騒ぎがあったんだから先生が来るのも時間の問題だし。


「礼は要らない。ちょうどお前に用があったんだ」

「えっ……ほぇ!?」


すっとんきょうな声が出たの急に腕を掴まれたから。

やけに静かな無言の状態が続く中、睦斗は私の手を引いて校内を歩く。

ほかの雷神のメンバーは誰もついてこない。

しばらく歩いて辿りついたのは、以前龍生に連れられてやってきた雷神たちが使ってる部屋。

陸斗はその教室に入ると中央のソファーに腰を下ろす。


「……座れ、優凛。
お前にどうしても話したいことがある」


どうしても?

真剣な表情にその言葉の重みが増す。

わたしはゆっくりと睦斗の正面のソファーに腰を下ろした。


「……睦斗?」


しかし、睦斗は少し視線を下に向けて黙ってしまった。

フリーズしたんじゃないかと思って、心配して声をかける。

それでも動きを見せる様子がないので、目の前で手をひらひら。


「………夢」


そんな時、睦斗が小さく呟いた。


「……安西夢」


再び睦斗から私の耳に届けられた言の葉。

なぜ彼は知っているんだろう。

私にとって最愛の、世界でたった1人の、愛して止まない人の名を。