睦斗に連れられて倉庫の外へ。

さすがにその頃には手を離してくれたから一安心。

だって手汗に気づかれないかヒヤヒヤしてたから。

安堵のため息をついてから、そう言えばどこに向かってるんだ?と気になったので質問してみることに。


「……ねえ、今からどこ行くの?」

「は?アジトに決まってんだろうが」


ア、アジト!?何だいその男の子が憧れるような素晴らしい響きは!


「ど、どこにあるのそのアジトって!」


興奮気味にたずねると睦斗は目の前を指して「あれだ」と私を見て答えてくれた。


「え……?」


見ると、威圧感のある建物が一つ。

黒のペンキで彩られた4階立てのビル。

右を向けば車通りの多い道路。左を見れば寂れた商店街。

それからビルと隣接して建ってる倉庫。今まで私はそこにいたみたい。


「優凛、突っ立ってないでこっち来い」

「あ、はいただいま!」


睦斗を筆頭に向かうは、全てが漆黒で彩られたビルの前。

窓ガラスがある部分にも黒のカーテンで塞がれてて、なんとも入りづらい雰囲気が漂ってる。

ヤクザ事務所みたいだ……。

けれど睦斗は臆することなくギィ、と重たい金属音を奏でる鉄の扉を押しやった。