「……認めてくれたから」


そうだ、全員一致で私を評価してくれるものがあった。


「私の歌を、認めてくれたから」


そのとたん龍ちゃんは目を見開いて、それから苦しそうに顔を歪めた。


「……ダメだ。ついていくな」


しかしすぐ表情を改め、低い声で釘を刺す。

なぜ!?どうしてそこまで龍ちゃんは否定するんだ?

否定されたことで、沸々とこみ上げるこの気持ちはなんなんだ?


「どうしてそこまで否定するの?私はもう自分で考えられる歳だよ。
それにお母さんは言ってたでしょ、大人は子どもの行く末を見守るんだって。
頭ごなしの否定はしちゃダメだって、言ってたじゃん……」


お母さんの言葉を思い出して龍ちゃんに伝える。

だけどズキンと頭痛がして目を逸らした。

……そう言えばいつからだろう。

お母さんを思い出すと頭痛がするようになったのは。


「……分かったよ、優凛」

「……え?」


その時、龍ちゃんが不意に笑った。

優しくてどこか悲しげな笑顔だった。


「睦斗、連れてけ。もう引き止めたりしねえから」

「……いいんですか」

「ああ、みんな待ちくたびれてるだろうし早く行ってやれ」


そう言って颯爽と歩みを進める龍ちゃん。

相変わらず背も高いし足も長い。

モデルさん顔負けだな。


「おい、この倉庫鍵閉めるから早く出ろ」


余計なこと考えてると、少し首を傾けて声を響かせた彼。

その時見えた龍ちゃんの顔が、くもって見えたの気のせいだろうか……。