「くあ……」


小鳥がさえずる清々しい朝。

新緑が映える桜の木。

昨日とは打って変わっての晴天!


「安西優凛!」


ルンルンで校舎に入ったら、不意討ちで叫ばれた私の名前。

何事!?と思って声がした方を見ると。


「なんじゃこりゃあ!」


思わず叫んだ私の眼には、世にも恐ろしいものが映し出された。

人人人、それから人。

ここは私の教室の前、のはずなんだけど、ありえないくらいごった返してて、教室に辿りつけるかどうかも定かではない。


「あっ!安西さんいた!雷神の連絡先教えて!」


呆然と突っ立っていると1人の女の子が詰め寄ってくる。

雷神の連絡先?そんなもん知らんぞ。


「安西優凛ー!ぜひウチの軽音部に!!」


それからなんかビラを持った男子が1人。

軽音部から勧誘なんて何事!?

そうこう考えてる内に熱気と化した人の声がビリビリ私に伝わる。

何十人もの生徒によって叫ばれる「安西優凜」。

な、なんという迫力……ってそんなことより。


「逃げなきゃ!!」


このままだと、もみくちゃにされて潰されてしまう!

今は自分の身を案じることが優先だ!