side 達綺


台所に行って姉ちゃんが作ったナポリタンを温める。

達綺用、と書かれた皿を電子レンジに入れてあたためる。

すぐあったまったから、フォークをもってテーブルへ。


「やっぱり忘れてたか……」


すぐには食べず、心の中にわだかまる感情を吐き出す。

母さんが教えてくれたナポリタンスパゲティは覚えてるのに、父さんから聞いた話は忘れてたんだ。

姉ちゃんが今日俺に相談してきたこと、あれは全部過去に父さんから聞いていたはずなのに。


……実は姉ちゃんには、姉ちゃん自身も知らない秘密がある。

それは過去の記憶が曖昧なこと。

一部の記憶がまるで最初からなかったのように抜け落ちていること。


きっかけは4年前の土砂降りの日だった。