リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

「……いや、後で食べる」


しかし達綺ちゃんは何を思ったか、ご飯はたべずにではなくダイニングテーブルに座った。

そしておもむろパチッとリモコンを手に取り、テレビの電源を切った。


「え?ちょ、何すんの!」


あやててつけ直そうとしたけど、リモコンの主導権は達綺が握ってる。


「……姉ちゃんなんかあった?」

「へ?なんだ!急っ……に!!」


話しかけてきたけど、私が注目してるのはリモコン。

素早い動きで必死に奪い返そうとするも、猫じゃらしで遊ばれてるかごとくかすりもしない。


「いつもそうだよな。なんかあったらわざと明るく振る舞おうとすんじゃん」


しかし返してくれる様子はない。

別に観たい番組なんてなかったし、聞いてみることにしようか。


「誰が?」

「だから、姉ちゃんのこと。何かあっただろ?」

「なにもない、ような……あったような」


あるとすれば、お父さんのことかな。


「……達綺、そういやちょっと聞いてほしいことがあった」

「やっぱりね。はいどーぞ」


それから私は、達綺に今日あったことを話した。

この近辺で有名な暴走族・雷神のこと。

そしてその総長が桜南高校にいること。

それから、お父さんが雷神の元総長だったってこと。


話し終えたら、なぜか少しすっきりした。

けど、その分達綺はもやもやしてるだろうな。

だって実の父親が暴走族のトップだったとか。


「……知ってるよ」


しかし達綺のその言葉は、予想を遥かに越えていたものだった。