リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

───キーン…コーン。


不意に響いた聴き慣れたはずのチャイムの音。

今はやけに大きく感じて、驚いて肩が跳ねる。

でもナイスタイミング。これ以上ここにいたらダメだから。

私はすくっと立ち上がった。


「帰らなきゃ!失礼いまします!!」


誰にも呼び止められない内に小走りで離れ、扉を開ける。


「おい、優凛!」


睦斗に呼ばれたけど、彼の怒りを承知で飛び出た。

あんな優しい目を向けられたのはいつぶりかだろう。





『ねぇ安西さん。あんたホント目障りね』

「っ……!?」







過去を思い出そうとした途端、脳裏にハッキリと捉えた女の声。

この声は誰?いつの記憶?


「ダメ!しっかりしろ優凜!!」


たまらず自分を奮い立たせ走り出す。

しかし心の曇りは晴れない。

まるでそれは窓の外に広がる空のように。


雨は降り続いていた。