そう言っておきながら「あ、でも」と考え直す。

 この世界で固有魔法は、個人に宛てた女神様からの祝福(ギフト)だ。きっと無差別や偶然なんかじゃない。何か意味があるからこそ、贈られているのだとしたら……。
 多くの人に知られては、幸せへの道が他人によって閉ざされてしまうかもしれない。
 それじゃダメだ。……アルトバロンは、聖女様と幸せになるのだから。

「やっぱり、私とアルトのふたりだけの秘密にしましょ! なんてったって、秘密の隠れ家だもの」
「はい、我が主の仰せの通りに。……ここは、お嬢様と僕だけの――」

 アルトバロンはまるで秘め事の共犯者のように優しく囁き、甘やかにゆっくりと目を細める。
 ゲームでも見せたことのないその表情にどきりとした。思わず頬が熱くなる。