「だって秘密の隠れ家に自分の意思で自由に入れるなんて、夢しかないでしょう? たくさん研究して、もっともっと便利にしたいわ!」

 こんな素晴らしい固有魔法、聞いたこともないのだ。

「アルトの意図した対象ってどこまでが範囲なのかしら? ベッドは召喚できなかったってことは、手の触れた範囲? それとも先にマーキングして範囲指定をするの?」
「えっと、お嬢様……?」
「食事を持ち込んだら食事もできるかしら? 蝋燭が灯っているし、家具は置きっ放しにできるの? それとも部屋自体は記憶の具現化? だとしたら、私とアルトの部屋を――」
「っふ」

 矢継ぎ早に質問していると、突然吹き出したような声が聞こえてきた。

「あ、アルト?」

 夢中になっていた私はぴたりと固まり、気まずい表情でアルトバロンを見る。
 彼はふわふわの狼耳を揺らし、くしゃりと今にも泣き出しそうな顔をした。

「ふふ、はははっ。あははっ」