年齢相応と言えば聞こえはいいが、彼女の立場はそれを許されない。

(……今回は僕が側にいたからまだ良かった。だがもし、お嬢様が悪人の腕の中で意識を失ったらと思うと)

 ぞっとする。
 想像するだけで苦しくなった胸へ、アルトバロンは無意識のうちにティアベルを抱き寄せる。
 そんな無意識の行動に驚くと同時に、主従契約を結んだばかりの主に対し、いつの間にかそれほどまでに心を寄せ始めている自分に気がついて目を丸めた。


 ◇◇◇


 アルトバロン――いや、ヴォルクハイト・ロア・グラナートは、この王国から遠く離れた大陸の北端に位置する獣人の国々を治めるグラナート皇国の第一皇子として生を受けた。

 誕生時、ヴォルクハイトは皇族としての純粋で強い魔力だけでなく、先祖返りと呼ぶに相応しい魔力を兼ね備えていたことから『将来有望な第一皇子』と祝福されたらしい。
 だが、生後間もなくして離宮での幽閉が決まった。