必死の形相をしたアルトバロンがこちらを振り返り、剣を握っていない方の腕を伸ばす。切なく歪められた菫青石色の瞳が『僕を信じてほしい』と懸命に訴えかけていた。

「アルト……っ!!」

 ……心配しなくても大丈夫。私はあなたを信じてるから。
 初めて彼の方から差し出された手のひらを、私は迷うことなく手に取った。

 彼の瞳が大きく揺れる。
 しかしそれは一瞬のことで、すぐさま鋭さを取り戻した。

「檻の中はどこまでも暗く、昏く、幸せに満たされる――〝箱庭〟」

 アルトバロンの静かな詠唱が耳元で聞こえたと同時に、三つの召喚魔法陣が緋色に輝く。
 暴風が巻き起こり、今まで感じていた以上の灼熱が肌を撫でる。
 咆哮と火の粉の揺らめきが迫り来る中、アルトバロンの腕が強く強く、私を彼の胸へ抱き寄せた。