「ティアベルお嬢様、お支度が整いましたよ」
「ありがとう、エリー」

 エリーの声に顔を上げる。

 鏡の中にいる美少女が、紅玉の大きな瞳を驚きでぱちぱちと瞬かせる。
 あ。改めて見ると完全に悪役令嬢ティアベルの幼少期ね。今までどうして思い出さなかったのか不思議なくらい。
 今世はなんて綺麗な顔に生まれたんだろうと思っていたが、乙女ゲームの悪役令嬢だったのならこれだけ可愛い造形なのも頷ける。なにせヒロインのライバルだ。

 それにしても。緩やかに波打つ白銀の髪を可愛らしく結い上げられ、露出の少ない真っ赤なドレスに身を包んだ私は、悪役感に満ち溢れた令嬢に仕上がっている。見た目だけなら、どこに出しても恥ずかしくないほど完璧な悪役令嬢だ。