数百年ものあいだ変化がなかった観測地点で、〝炎翼竜〟たちが突如として一斉に咆哮をあげたそうだ。

 発表後、まず忙しくなったのは宮廷魔術師団だった。
 お父様たちは昼夜を問わず国中を回って、王国中の守護魔法や防炎魔法を強化したと聞いている。

 お父様がディートグリム公爵家を留守にしている間は、私とアルトバロンが主導して毎日様々な魔法を駆使し、屋敷の地下から上空にいたるまで守護を施した。

 ディートグリム公爵家の敷地は特別に魔力が強い。
 その上、炎翼竜たちが好む妖精植物もある。
 なので個人的に守護魔法を施していないと、炎翼竜が降り立つ可能性があるので危険なのだ。

 お父様は今日まで帰宅できないと聞いていたけれど、炎翼竜の姿が王都上空に現れる前に無事帰ってきてくれて良かった。
 やっぱり、お父様とアルトバロンがふたりで編む守護魔法が一番安心できるもの。
 あとでふたりには『お疲れ様』と伝えに行かなくちゃ。