それでも、王国筆頭癒師が同席するこの会を、メローナ様があえて『健康女子会』と称すのは、不安で塞ぎがちになっているクレアローズ妃殿下を気に病ませぬようにするために違いなかった。

「そういえば、本日のアロマはどのようなブレンドなのでしょうか? とっても珍しい香りがいたしますね。
黄金の柑橘を思わせる甘さと、異国情緒なスパイシーな芳しさが華やかで……。〝水蜜甘露〟と乳香の精油をブレンドしたものでしょうか?」

 お茶会が賑やかに盛り上がりを見せたところで、何気なさを装いながら、アルトバロンが警戒を見せていた精油の話題を出してみる。

 すると、一瞬だけ。ほんの一瞬だけ。
 ずっと笑みの形を保っていたアンデ夫人の唇が、細かく震えたような気がした。