……ううっ、転生して何年経っても衣服に対する意識が変わらなくて困るわ。

 上質な綿素材でできたレースたっぷりの寝衣は、前世でいうところのお洒落なワンピースに見える。
 普通に外出できそうな衣服のため、起床してすぐにメローナ様から呼び出されたりすると、正常な判断が鈍って時々アルトバロンを困惑させていた。

 むしろ、前世で着ていたパジャマの方が、人前に出にくい気すらするのだから重症よね。

 私はアルトバロンに掛けられた上着の胸元をきゅっと寄せて、寝衣を隠す。
 彼の軍服風のお仕着せは、私のスカートまでをすっぽりと隠した。

「アルトの上着がこんなに大きく感じるなんて、なんだか不思議ね」
「……ええ」

 感情を抑え込んだ彼の平坦な返事の代わりに、黒い狼耳がぴくりと震える。

 彼の背丈はいつの間にかぐんと伸び、今では百七十五センチを越えている。王立魔法学院三年時は、確か百八十センチを超えていた記憶があるから、まだまだ伸び盛りだ。