そんな折に、シュテルンベルク王国でアロマ製品が盛り上がりを見せているという情報を聞きつけ、『妖精蝋燭という文化が見直されるキッカケになれば』と、移住してきたという。

「不思議なもので、妖精蝋燭は最後の炎が消える一瞬に〝好きな人の現在の様子〟を映すと言われているんです。まあ、恋占いのようなものですが」

「それでこんなに大勢の女性のお客様が……」

「ふふっ、いつの時代も女の子は恋占いに憧れるものだわ。わたしはよく、工房にこもりっきりの夫の頑張っている姿を見せてもらうんですよ」

 お喋りに夢中になっている間にも、ターラさんが丁寧に商品を包み、会計に移ってくれる。
 ターラさんのお話を聞いて、私は今度マーガレット先生が主催される『刺繍お茶会』の手土産として、妖精蝋燭をいくつか購入していこうと決めた。

「アルト、お会計をお願いしてもいい? 私はあっちの棚を見てくるわね」
「わかりました」