「そうなの。メローナ様の案件でね。帰りはレグルス殿下が送ってくださったのよ。朝はメローナ様が迎えに……というか、さらわれたみたいな感じだったんだけど、帰りは置いていかれちゃったのよね」

 まったく、メローナ様ったら『健康にいいこと』にしか興味がないんだから!
 とティアベルが、随分と打ち解けたらしい女性癒師団長を思い出してか、腰に手をあててため息をつく。

「そうでしたか。では僕も、お嬢様の従僕としてレグルス殿下にお礼を伝えなくてはいけませんね」

 アルトバロンはティアベルへ向ける激しく重たい独占欲を隠すため、その美貌に、誰もが見惚れる絶世の微笑みを浮かべた。


(初恋と呼ばれるような淡くやわらかな段階は、とっくに通り過ぎている。この歪な感情に、名前をつけるとしたら……――きっと愛だ)

 それも愛を深淵の奥深くで煮詰めて、蜂蜜のようにどろどろに溶かした、〝猛毒〟に近い深愛だ。