(つい、いつもの習慣でお嬢様のもとへやって来てしまった)

 把握もなにも、今日の新しい予定はそもそもアルトバロンに伝達されていなかったのだ。
 これから先一ヶ月もの間、本気で従僕としての任から完全に外されるらしい。

「いえ。この通り僕は元気ですので、護衛騎士としての同行を許可していただければ」

 アルトバロンはなんだか不安になって言い募る。
 けれども、ぷんぷん怒った顔をしたティアベルが「だーめ!」と、まるで駄々をこねる弟を叱るように注意した。

「どうか私のことは忘れて、羽を伸ばして。せっかくの長期休暇なのだから、ゆっくり休んで鋭気を養ってね」
「……はい、ありがとうございます。どうか気をつけて、いってらっしゃいませ」

 強く言い渡されてしまえば、あとはもう見送るしかできない。

(これから先の一ヶ月間、僕は従僕として彼女の側に控えることは許されないのか)