アルトバロンはわずかに目を丸めて、首を傾げる。

「今日は午後から、家庭教師と今後の進路についての面談が予定されていたはずですよね?」

 従僕として、ティアベルの予定は完璧に把握している。
 多忙な時には分刻みで予定を立て、ティアベルに進言するのもアルトバロンの仕事だ。

「ええ、そうよ。でもその前に、メローナ様からお呼び出しの連絡があって。早い時間だけれど、今から王城へ向かうところなの」
「そうでしたか。すみません、予定の変更を把握していませんでした。僕もこのまま同行致します」
「アルト」

 ティアベルは腰に両手を当てて、怒っていますという顔をする。

「あなたは、今日から最低でも三日間は絶対安静なんだから。屋敷で休んでいて」

 そう告げられてやっと、旦那様から一ヶ月の(いとま)を言い渡されていたんだった、とアルトバロンは思い出した。