「私は絶対に、アルトに私のうなじを噛ませたりしない」
「………………っ!」

 アルトバロンはなぜか言葉を無くしたように息を詰め、大きく目を見開く。


「あなたの〝最愛〟を奪ったりしないから――……だから、安心してね」


「…………は、い」

 アルトバロンは、まるで感情を押し殺すように声を震わせながら返事をする。
 そして、美しく微笑んだ。

 花のほころぶような綺麗な笑顔なのに……なぜだろう。彼が今にも泣き出してしまうのではないかと思うほど、切なく、苦しげに見えた。