「ひゃぁぁっ、もふもふ……っ!! 想像以上の柔らかな毛質! サラサラ! もふもふぅぅ」
「う、あ、……お嬢様……っ」
「ふふふっ」

 アルトバロンが頬を染める。
 尻尾が少しパタパタしては、ぎゅうーっと感情を抑えているみたいにピタリと固まるのが可愛い……!

 私はついつい前世で飼っていた愛犬を思い出して、「いいこ、いいこ」と言いながら彼の狼耳を堪能した。
 前世で培ったなでなでスキルが発揮されているのか、アルトバロンは時折気持ち良さそうにしては眉根を寄せて、「うう」とか「ぐう……」とか唸りながら堪えている。


「……でも、本当に。アルトの身体に魔力中毒の後遺症が残らなくて、良かった」

 やっと明るい日常が戻ってきた実感に、改めてほっとした。
 今、こうして私とアルトバロンが笑いあえているのは、私の固有魔法がゲームの悪役令嬢(わたし)とまったく同じで〝毒林檎〟だったからだ。