白雪姫のごとく可憐な聖女様を害する魔女の老婆、いや、悪役令嬢が使う固有魔法と言ったらあれ(・・)しかないだろう。

 私の固有魔法は、他人を仮死状態にできる禁忌の果実の生成……『毒林檎』の召喚だ。


 白髪のごとき長い髪、紅玉の瞳、そして両手でうっとりと毒林檎を持つ十七歳の少女――
【白雪姫とシュトラールの警鐘】の悪役令嬢ティアベル・ディートグリムは、王立魔法学院でも極悪非道の『毒林檎令嬢』の異名で恐れられていた。

 貴族生徒の中には、虎の威を借る狐状態で悪役令嬢の取り巻きをしていた子たちも多く、ゲームでは派閥があるような描写もあったっけ。
 なんだかんだ、ゲームの悪役令嬢ティアベルはお友達が多かった。いわゆる恐怖支配というやつだ。

 どんな因果か私は幼い頃からすでに危険物扱いを受けていて、さらに社交界ぼっちもキメているので、ゲーム本編軸ではどうなってしまうのか……と戦慄してしまう。