「お嬢様も、発現した後は不用意にその内容を口にしないでください。使用人たちはお嬢様の固有魔法が発現した、と分かればそれでいいので。試される際は、旦那様のお部屋で行われた方が良いかと」
「わ、わかったわ」

 エリーもアルトバロンも、宮廷魔術師団を率いる父を持つディートグリム公爵家の令嬢だからこそ、どれほど危険な固有魔法が発現するかと警戒しているのかもしれない。

「心配なさらずとも大丈夫です。お嬢様には僕たちが付いていますから」

 アルトバロンの唇が小さく弧を描く。
 どうやら彼には、私が緊張を隠して落ち着いているフリをしていたのがバレていたらしい。
 エリーのようにそわそわ歩き回ってはいないものの、実は私も別の意味で(・・・・・)すごくドキドキしていた。

 というのも、この世界では絶対にあり得ないことだが、前世の記憶がある私は、まだ発現していない自分自身の固有魔法を知っている。