女神の祝福と言い伝えられている固有魔法は、十三歳の誕生日を迎えたその日に、魔力のあるほとんどの子どもに発現する。
 固有魔法には大小様々な種類があって、動物と会話できるものだとか、空を飛べるものだとか、掃除が一瞬でできちゃうものだとか……わかっているだけでも幅広い。

 一般的には教会が呼んでくれた宮廷魔術師団に所属する鑑定師に視てもらうことが多く、鑑定書を出してもらえば就職が有利になったりもするらしい。

「だけど多分、お父様は鑑定師をディートグリム家の敷地に入れたがらないと思うわ。我が家の魔法が他人に分析されるのを、お父様は嫌がるから」
「僕もそう思います。今朝も使用人を集めて、お嬢様の固有魔法が発現した際にはくれぐれも内密にと厳命されていましたので、鑑定師はもってのほかでしょう」

 背筋を伸ばし、ぴしりと黒いもふもふの尻尾を打ったアルトバロンが頷く。