「だから、それのお詫びでもあったんだ。ディートグリム公爵閣下は、少なからず喜んでくれただろう?」
「そうだな。そうだが…………目前となると、気が変わった。可愛い娘に婚約はまだ早い」

 グレイフォードが眉間のシワを増やす。

「ふふっ。溺愛だね」
「最愛の妻が残した大切な娘だからな」
「幸せそうで妬けるよ」

 ユーフェドラは穏やかに微笑んで窓の外に視線を向ける。
 眼下に広がる城下の街路樹は赤や黄色に彩られており、深まる秋を告げていた。