「先方が『謝罪をしたい』と申し出ているのでしたら、お嬢様の不利益にはならないでしょう」
「ううん、そうかもしれないけれど……」

 なんとなく胸騒ぎがするのは気のせいだろうか。



 あの夜――アルトバロンの秘密の箱庭から出ると、屋敷にいたはずの招待客は最後の一人まで見送りを終え、使用人達は各々パーティーの撤収作業に入っていた。

 庭園修復のため護衛騎士達に指示を出していたお父様は私とアルトバロンを見つけると、どこにいたのか、どうやって帰ってきたのかも聞かず、無言で私をぎゅっと抱きしめた。

『ティアベル、よく頑張ったな。今夜はもう休むように。アルトバロンもご苦労だった』

 今まで何をしていたか詳細を聞き出しはしなかったけれども、その代わりにいつもよりハグが長かった。お父様なりに心配していたようだ。

 私を解放した後は、アルトバロンの肩に手を置いて労うように優しく叩いていたから、もしかしたら全てを知っていたのかもしれないけれど。