色気のある紫水晶の瞳は、なにやら企んでいそうな雰囲気を湛えていた。

「どうするもなにも、謝罪するのはむしろ我が家の方だと思うのだけれど……」

 そう言って、私は助けを求めるように給仕を手伝うアルトバロンを見上げる。

 出会った当初はツンツンの極みだったアルトバロンだけれど、今では随分打ち解けてきたと思う。
 護衛を兼ねた専属従者という立場上、ほとんどの時間を一緒に過ごしているし。
 もちろん彼の鍛錬と私の授業の時間は別々だけれど、年齢の近い主従としては良い距離感を保っていると思う。

 メイドのエリーが運んできたワゴンに乗っていた三段重ねのティースタンドから、何も言わずとも私の大好物の林檎タルトを選んでくれたアルトバロンは、私の視線を受けてクールな美貌に涼やかな微笑みを浮かべる。

「悩まれるのでしたら、お会いになられてはいかがですか?」
「……そうかしら」