「西野のこと。この前は焦ってて佐田連れてったら?なんて言ったけど、よく考えてみたらすごく気まずいだろうし、関係拗れないか不安でさ」

「あー、」


「もう伝えちゃった?」



心配の色を孕んだ瞳で顔色を窺う那乃を安心させるように「大丈夫だよ」と口角を上げる。



「言ってないよ、なんにも」

「ほんと?」


疑い深く問うものだから思わず笑ってしまう。うん、と頷いて、「心配してくれてありがとね」と感謝を伝えれば那乃は安堵の笑みを見せた。



「でもよかったー、あたし協力できなかったから世莉ひとりで不安だったんだけど無事解決して安心した! もうこれで関わらなくて済むね」

「そうだね」



ひとつ嘘をつくと、それを隠すためにいくつもの嘘を重ねなくてはならない。今まで那乃に隠しごとをしたことがない故に、とてつもない罪悪感に苛まれる。



自分のことだと楽観的なのに、わたしのことになると那乃は過保護だと思うほど心配する姿を見せる。それに、西野くんが絡んでくると余計に。



やっぱり、那乃だけには本当のことを打ち明けたほうがいいんだろうか。


ひとりで抱え込むのも限界がありそうだ。




迷いに迷っているうちに教室に着いた。でも、今を逃すと一生言えないような気がして。きっと、今が話を切り出すのにもちょうどいいタイミングだ。





「那乃、」