追憶ソルシエール


「岩田どうした。テストそんな悪かった?」


授業が終わり、力が抜けたように机に伏すわたしを心配そうに覗き込む伊吹くん。


「ううんー、いつも通りだった」

項垂れるほどの点数だったわけじゃない。先程返却された物理のテスト結果は至っていつもと変わらずだった。


「うわー、さすがだ。でも岩田頑張りすぎなんじゃね? 最近疲れて見える」


まだ机の上に置いていたテスト用紙を許可なく手に取られた。阻止する気力もない。それよりも引っかかったのは別の言葉だ。



「わたし疲れてるように見える?」

伏せていた身体を起こし、パチパチと両頬を叩く。


「うんうん」

いつから話を聞いていたのか頷くや否やわたしの机に腰をかける那乃。


「元々ちょー元気!ってタイプじゃないけどなんとなく覇気がない感じ? 天使の輪が消えてる」

「え、伊吹も知ってんの? 世莉のあだ名」

「南高の友達が言ってたんだよね」


どこまで広がっているんだろうか。てっきり谷川くんの中だけでの流行りかと思っていた。


「今日バイトもあるのに」

接客業は笑顔が命。来店するお客さんを疲れ果てた顔で迎えるのは失礼だ。



「世莉最近学校来るの早いじゃん。そのせいじゃない?」

「お、確かに」と頷く伊吹くん。