テーブルの上に置いたスマホを開き、SNSのアプリを起動した那乃。図書館に行きたくないって言った時点で真面目に勉強する気はないのだろうと悟ったけれど、このままでは本当にピンチな気がする。だからこれは那乃のためだ。



「那乃だけ冬休み学校に缶詰状態になるよ」


スマホを見ていた顔を上げ、珍しくはっきりと物を言うわたしを見て、那乃は目をぱちくりさせる。



「わたしが冬休み満喫してる間、那乃は学校でずっと課題だよ。部活も少しあるだろうし忙しくて家帰ってからも大量の課題こなさなきゃいけなくなるんだよ。勉強しながら年越してもいいの?」



一気に言い切った。
早口で話したからか少し息が切れて深く息を吸う。



時が止まったようにぽかん、とわたしの顔を見つめ続ける那乃。魂が抜けたのかと思うほど一点を見つめている。純粋に怖い。

心配になって「那乃……?」と呼びかけながら顔の前で手を上下させれば、ハッとした表情で「決めた!」と何やらこの時間に決意をしていたらしい。



「あたし古典しか勉強しない!」

「え?」

「古典だけ赤点回避すれば補習にはならないじゃん!」

「まあ、そうはそうだね」

「そしたら冬休みいっぱい遊べる!」

「んー、」

「すごいいい作戦じゃない?」

「えぇー、悪循環……」