「……」

 竜は無言で美利を見て、『あぁ…』と呟く。

 その声には明らかな後悔の色がにじんでいた。

 彼は美利があんなにも泣いているところを見たことがなかったから。


 『ゴフッ!!』


 不気味な音を残して竜の身体が再び吹っ飛ぶ。

 そのまま彼は動かない。


「とりあえず今のところは後悔しているみたいだからな、俺はそれで許してやる。
 くーがお前を許すかどうかは知らないけどな」

 気持ち悪いものを吐き捨てるように竜にそう言葉を浴びせかけると美利の元へと歩いて行った。

 彼女に恐怖を与えないように小さく肩を抱いて、

「もう少し早く来ればよかった。ごめん」

 そう、泣きそうな声で呟いた。

 美利が、『智樹のことが好きだ』と気付いた次の日の出来事だった。


 彼女は少しだけ彼にしがみついた。