『ギュ…』

 雪を踏みしめる音がする。

「智樹?」

 その足音は美利より少し離れたところで立ち止まる。

「智樹なんでしょ? 三日間学校休んじゃったね。
 皆勤賞なくなったね、まあサボってるから皆勤賞は無理か」

 はははと乾いた笑いをする美利。

「そうだ、手紙書いたんだよ。渡すから今読んでよ」

 美利は穴に入れた手紙を取り出した。


「…くぅ」
「何? 竜みたいな呼び方して」

「…俺」
 震える声。

「俺、智樹じゃない」
「智樹でしょ? 何言ってるの」

 振り向いた美利と目があったのは紛れもなく竜だった。

「智樹は?」
「病院」

 美利は引きつった笑顔を作る。

「何で?」
「……事故に…あったから」

 竜の声は震えている。
 美利の声も震えている。