クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

「すぐに用意してくれるって。ロビーに着いたら連絡くれるそうだから受け取りに行ってもらっていい?」
「はい…!」
「あ、そうそう、待っている間にお茶を準備してもらえないかしら? あいつ、冷たい蕎麦には淹れたての番茶が好みなのよね。あの見てくれで好みが年寄りくさいのよねぇ~」

言われるがままお茶を準備しているうちに、専務と高田さんが戻ってきた。

「ああ、腹が減った!」

専務は着席するなり大きく伸びをした。

「お疲れさまでした。もうすぐ昼食が届きますので」

麦茶を差し出しながら言うと、専務は一気に飲み干してにっこりと笑った。

「ありがとう。今日は暑いから蕎麦がいいかな。あと天ぷらも付けてくれると嬉しいんだけど」
「あ、はい…! ちょうどその組み合わせにしました! もう少しで」
「ほんとに?」

専務はさも嬉しそうに、目を細めた。

「嬉しいな。俺の好み、調べておいてくれたの?」
「い、いえ…!」

全部亮子さんが準備してくれた、と言おうとしたら、

「そうなの! 芽衣子ちゃんがね『今日みたいに暑い日は専務は何がお好みですか?』って訊いてきてくれて」

すかさず亮子さんが横から割り込んできた。
しかも両手にはお盆に乗ったお蕎麦と天ぷらが…! 連絡が来る前にロビーに取りに行ってくれたんだ…!

訂正しなくては…! と口を開きかけた私だったけれど、亮子さんがしきりにウィンクをくれるので、何も言えない…。

専務はすっかり信じてしまって、私をじっと見つめて微笑んだ。

「嬉しいな。君のその優しさが俺にとっての一番のスタミナだよ」
「もうなによ、そのしまりのない顔~」

亮子さんが料理を並べながら噴き出して専務室から出て行く。
せめてお茶ぐらいは…! と給湯室に行くと、亮子さんがすでに番茶を淹れていた。