クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~




カフェ事業の経営を主にみている専務だけれども、次期代表取締役としてホールディングス全体の事業についても当然のことながら携わっている。

だから、入ってくるアポイントも多岐にわたる所からだったりするのだけれど…。

「…染物屋さんに、漆器工房さん…?」

送られてきたEメールの送信元を見て私は思わず呟いた。

どちらも先方リストを確認しなくても分かるほどの、一級品の品を作り上げる老舗の工房屋さんだ。
件名は『打ち合わせの件について』とある。

専務秘書に就いてばかりの私だけれど、首を傾げた。
恐らくアパレル事業や雑貨販売事業についての打ち合わせなのだろうが、商品についての単純な打ち合わせなら各事業の仕入れ部門とやり取りすれば済むことだ。

どうして専務に直接連絡が来るのだろう?

とはいっても、入りたての私が疑問に思っても仕方がないことだった。
専務の仕事については少しずつ勉強していけばいい、とスケジュールに組み込むけれど…よく見ると、こういった工房屋さんとのアポが多いことに気付く。
それだけでなく、華道や茶道の家元の名前も目に付く。

一体、専務はどんなことに携わっているのだろう…?