クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む～運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です～

なんてびくびくしていると、不意に手を差し出された。

『岸芽衣子さんですね。初めまして、私は専務直属秘書統括リーダーの高田です。今日から一緒に働くことになりますね』

はっと私は思い出す。
専務が私のお店に来た時に一緒だった人と同じだと。

『…初めまして。岸芽衣子です。どうぞよろしくお願いいたします』

と、おずおずとお辞儀をすると、一瞬だけ、高田さんの口元が綻んだように見えた。

『こちらこそよろしくお願いします。秘書業務は初めてだそうで？』
『は、はい。ご迷惑をおかけすると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします』
『あの方の面倒を見る仲間が増えて心強いですよ。あの方はかなり自己中な性格でしていろいろと大変でしょうが、根とてもは良い方です。どうぞよろしくお願いいたします』

なんだか、専務と同じ様な言葉だな…。

とその時、専務と高田さんの信頼関係を知ったような気がして、ちょっと緊張が解けたのを覚えている。

高田さんはコーヒーをすすって淡々と言った。

「迷惑だなんて思っていませんよ。むしろこの数日だけでよくやっているほうです」
「そうですか？」

高田さんに思わぬ言葉をもらって私は思わず聞き返した。

「ええ。うちは秘書が他の執行役員に比べて少ないですからね。仕事の覚えが早いのはとても助かります」

とは言ってもらえても、高田さんから見れば私はまだまだ駆け出しのひよっ子だろうけど…。