クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む～運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です～

「高田さん、お疲れでしょう？　コーヒーを淹れますね。少し甘い方がいいですよね。砂糖とミルクを付けますね」
「そうですね、お願いします」

専務のこだわりで、コーヒーは御用達の豆をその場で挽いてから淹れる。

「ん、美味しい。岸さんはコーヒーを淹れるのがすぐ上手になりましたね」
「本当ですか？　ありがとうございます」

高田さんに褒められて、嬉しくて思わず顔が綻んでしまう。
このコーヒーの淹れ方については何度も練習した。専務や高田さん達先輩秘書さんに、ほっと心休まる時間を過ごして欲しいから。
今の私が精一杯できることといったら、これくらいしかない。

「仕事の方は慣れましたか？」
「どうにか…。でもまだまだ何もできなくて、高田さんにもご迷惑をかけてばかりで…」
「いえ、そんなことはないですよ」

高田さんは話す時も表情を崩すことなく口調も抑揚がなくて、どことなく冷たい印象を与えがちだけれども、言葉はとても優しい。

専務からは、秘書としての入る前に『秘書の一人で機械みたいに冷たそうな男がいるけれどうまくやって欲しい。悪いやつではないから』と心配そうに言われたけれど、なんてことはない。とても頼れる先輩だ。

でも、最初に会った時は、緊張したけれども…。