クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

「ねぇ、だんまりされてもわかんねーんだけどー? 俺らと飲むの飲まないの?」
「……」
「ねーおねーさん!」
「…や…!」

手を掴まれた瞬間、私は上擦った声で悲鳴を上げた。

露骨に嫌悪感を出してしまった私の反応に、男達の表情が強張る。

「はぁ? んな嫌がることねーだろ?」
「誘ってるのはそっちだろーが。気に入らねぇんならちゃんと口に出して―――」

「口に出すのも煩わしいくらいお前達が嫌なんだよ。分からないの?」

突然、男達の背後に人影が立ち、一人の肩を掴み引いた。

「ってーな! なんだよお前…!」

と男が振り向いた瞬間、照明が差し込んで、その背後に立った男の人の顔を浮かび上がらせた。

奇麗。
一瞬でそう思った。

眩い照明を背に受けて陰影をまとったその顔立ち。

くっきりとした高い鼻梁。
そして影の中でも凛とした光を放つ、まるで繊細な細工を思わせるような精美な目…。