クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む～運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です～

「おねーさんすっごいキレ―だね。そやってずっと立ってると超目立ってたの知ってた？　それともわざと？」
「ね、おごるからさ、俺たちと一緒に飲みに行かない？」

ジャケット姿からは会社員らしい雰囲気を感じるが、女慣れしていそうな軽薄さも漂っていた。

私を値踏みするように上から下へと明け透けに見る眼はぎらついている。

男性経験のない私でも解かる。
淫らな目的で私に近付いたということを。

望んでいた状況だった。
このために私はこの場に来たんだ…。

「ね、どーう？　俺たちと一緒に飲まない？」

だというのに、私の胸に猛烈な嫌悪感に押し寄せた。

お酒臭い。
酔うままに下心を剥き出しにして話しかけてくる下品な人達。

自分を汚したくて来た。
…でも、いざその汚らわしいものを前にすると足がすくんでしまっている自分がいる…。

首を縦に振れさえすればいい。
そうすれば私は変われる。父が操る糸を断ち切れる。

でも、泣き出したくなるような嫌悪感が私を凍り付かせていた。