クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

ウィンドウに飾られていたトルソーの服をまるまる買って着てきたのだけれど…ヘアスタイルとメイクが合わなかっただろうか。
ちゃんとインターネットでこんな格好に合うメイクを真似してきたつもりだったのだけれど…。

と、正面から歩いて来るカップルで自分と同じような格好をしている女性を思わず見つめると、何故か彼氏の方が私をじっと見つめてきた。

すると彼女が彼氏に肘打ちして、むっとしたような顔をして私を見つめ返して通り過ぎていく…。

いけない…不躾に見つめすぎたかしら…。

女の人のああいう視線には、いったいどういう感情が込められているのだろう…。
やっぱり私がこんな格好をするのは、変だったかしら…。

そんな不安で一杯になりながら、どうにかこうにかたどり着いて、こうしている今だった。

ホールの後ろにある飲み物を提供するバーのような場所にそっと視線をやる。

音楽を楽しんでいない人たちは、そこに集まって面々に話をしていた。

カップルとみられる男女が、顔を近付けて互いの身体を触り合いながら親密そうにしている。

そうではない人達は、友達同士で来ているのか楽しそうに談笑している―――その中の一人に、私は思わず目を止めた。