クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

耳がじんじん痛む。
今朝開けたばかりのピアスは、自分で自分を汚すための第一歩だった。
この痛みを最初に自ら科したのなら、もうなにも恐れることはない。

オフショルダーのセーターや膝上スカートにもだいぶ慣れてきた。
肌が晒される分だけ無防備になるけれど、今夜の私にはそれはむしろ好都合だ…。

『ナンパされる 場所』

そんな安易な検索ワードを頼りに、ここまで来た。

繁華街の一角にある流行のクラブハウス。

十代の若者から私ぐらいの年齢層まで、いろんな男女が集まり楽しみ、そして一夜だけの出逢いを繰り返している。

私もそのためにやってきた。

そう。今夜こうして来たのは、ナンパをされるため。

そして、父が作った清楚で真面目な自分を、貶めるため。

と言っても、初めて体感する派手な照明と轟音空間にすっかり圧倒されてしまって、来てからもう一時間近く、音楽に乗ることもできず立ち尽くしているのだけど…。