クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

すべて命じられるままに生きてきた私が、社会に出て通用するはずはなかった。

就職試験では自分の意思が言えずすべて不採用となり、アルバイトを始めても環境に馴染めず辞めるか辞めさせられる。

茶房紫庵はそんな私がやっと見つけた「自由に羽ばたける」場所だった。

日本文化をコンセプトにした甘味処。
ここでは私が磨り込まれた茶華道の知識や教養を役立てることができた。

飲食店業務に慣れるまでには苦労したけれども、優しく気のいい従業員さん達がいてくれたことも救いになった。

心開ける仲間たちの中で自分の特技を生かしてどうにか自立し始めてきた、と自信をつけた最近だったのに、そこへまた、父から命が下りた。

家に戻って結婚しろ、と。